「一々天真 一々明妙」

日本で「立てる花」が座敷飾りの花として成立しいけ花が流行する同じころ、日本から遠く離れた国でバロック音楽がありました。
たて花とバロック音楽が調和することなど、当時の人は思いもしなかったでしょう。新春の献花では想像以上に花と音が調和いたしました。現代に生きている私は、古典を学ぶことを大切にしています。それは、先人の切り開いてきた道を理解することで、これから未来へ進む花の道が明確になってくるからです。そして、さらに大事にしたいことは、国や文化を超え、人知を超えて、自然の摂理にしたがって素直に生きたいということです。
「一元復始、万象更新」新しい年が始まり生きとし生けるものがキラキラと輝いています。
今年も新境地にて信じる花の道を進みたいと思います。伝統的な方法とインターネットを使用し、皆様と「花のこえ」をきく機会が増えることを楽しみにしております。

2023年 癸卯  珠寳 花士

花瓶 : 大耳口立花瓶
様式 : たて花 
: 若松、紅白梅、水仙花、射干の葉(胡蝶花)、椿、熊笹、小菊
衣裳制作 : 長艸敏明 長艸純恵 (長艸繍巧房)
演奏者 : Chafik HASHIZUME 
楽器 : Viola da Gamba 
「一々天真 一々明妙」とは

「天真とは先天的な純粋の性。人は自他の設けた規定や束縛によって自己の存在を作り上げ自認するが、それは虚構の存在にすぎない。・・・全く思量にわたらず、自我を虚にして自然に任せれば、肢体は従容として、本来の生き生きとしたはたらきが自己の内側から自ずと生じてくるのであり、そのようなはたらきは、奥深く、かつ同時に明らかに各人および、一々の事象に顕現している。」『大慧普覚禅師語録』(茶席の禅語大辞典より引用)